パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「期待してるんかい!」

 小声でツッコミを入れてしまった私。
 でも、ニカっとお日さまみたいに爽やかに笑いながら、そう言う大輝が脳裏に浮かんで。

「期待してますよ~」

 って言いながら、こちらに親指を立てて見せる大輝まで、はっきりと浮かんで。

「義理チョコならいいかな」

 なんて、先ほどまで後悔していたことも忘れるくらい、脳内が大輝で満たされてしまって。

 たくさん助けてもらったんだから。
 欲しいって大輝も言ってくれてるし。
 今はまだ、本命チョコは渡せないけれど。

 そう思って、久しぶりに買ってきたチョコレートを刻み、型に流し、冷やし、ラッピングを終えたのがついさっき。

 それを鞄にしまって、いざ寝ようと布団に入った。でも眠れなくて、大輝からのメッセージを見返している。

 すると突然、大輝からのメッセージが届いた。

[チョコ作った?]

 魚だか龍だか分からない生物の、「チョコください」スタンプが添えられている。

「何これ」

 笑いながら[ちゃんと作ったよ]と返す。

[やった、返信全然ないから心配してた]
[これで明日は迎えに行けるな]
[ついでに梓桜のチョコももらえる、と]

 また同じキャラクターが「よろしく」と言っているスタンプが送られてくる。
 大輝のお道化ながらもちゃんとこちらを気遣ってくれているようなメッセージに、私は[ごめんね]と胸の内で返信した。
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