パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 翌朝、大輝は本当に朝9時ぴったりに迎えに来てくれた。二階の寝室で颯麻のおむつを取り替えていると、外からエンジンの音が聞こえたのだ。

 窓から外を覗けば、黒のSUVが目に入る。もう見慣れた、大輝の車だ。

「あら大輝くん!」

 洗濯物を干していた母が、降りてきた大輝に声をかけていた。

「おはようございます! 今日は梓桜と颯麻くん、お借りしますね!」

 そう言う大輝の声を聴きながら、慌てて息子にズボンを履かせる。

「大輝くんのおかげね。あの子、今まであまり休みの日に外とか出なかったから」

 そんな母の声が聞こえて、そういえばそうだったかも、と気づく。この街に、この家に戻ってきてから私が休日にしたこと、といえば。

 最初に行っただけの図書館、そこで知った市民祭り。それから消防署見学や、行けなかったけれど出初式、それに大輝のお家――。

 今まで自分のことで精一杯で、なんとかしなきゃと出かけることなんてほとんどなかったのに。こんなに休日も予定がたくさんになるのは、大輝のおかげだ。
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