パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「あの子、いろいろあってね、こっちに戻ってきてから、どっちかっていうと内にひきこもりがちだったの。だから余計に、大輝くんが連れ出してくれて嬉しいわ」

 私のことだけじゃない。
 颯麻のために、私はもっと外で遊ばせてあげたりするべきだった。それをできなかったのは、至らない母親である私の責任だ。

「俺、梓桜さんが大事ですから!」

 不意に大輝のそんな大きな声が聞こえてきて、頬がかぁぁあっと熱くなる。

「ママあ? お出かけ、準備じゅんびー!」

 颯麻のそう言う声に助けられ、慌てて靴下を履かせると、私は鞄を持って部屋を出た。

 *

 大輝が連れてきてくれたのは、市民祭りも行われた公園だった。

「ポンプ車、来るー?」

 颯麻もあの日のことを覚えているらしい。

「今日は来ません」

 ふふっと笑い、お道化ながらステアリングを握る大輝。
 私は後部座席に取り付けたチャイルドシートに座った颯麻と並んで、今日はそんな大輝を後ろから見ている。

「でも代わりに、色々連れてってやるからなー」

 大輝はそう言って、エンジンを止めるとこちらを振り向く。その爽やかな微笑みに、私は胸が高鳴った。

 ――今日は、『デート』だ。
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