パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 動物園を出ると、大輝は一度車に戻って大きなバッグを持ってきた。そして、あの日消防車が止まっていた大きな芝の広場に私たちを連れてきてくれた。

 石垣で作られた花壇の向こうに、たくさんの菜の花が咲いている。この公園名物の、早咲きの菜の花だ。

 大輝はバッグから取り出したシートを広げる。

「今日の目玉は、ピクニックデートです」

 お道化るようにそう言って、さっそく私に座るよう促す。周りを見れば、同じようにシートを広げ、のんびりしたり走り回ったりする家族連れの姿。

「じゃあ、お邪魔します」

「ぼく、走るー」

 靴を脱がせようとしたところで、颯麻は広い芝に興奮したのか、どこかへむかって走り出す。

「よーし、追いかけっこだ!」

 大輝はそう言って、颯麻を追いかけていく。

「あ、梓桜は座ってて」

 私は駆けていく二人を、シートの上から見守った。
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