パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 颯麻は大輝に肩車してもらったり、戻ってきて持ってきたミニカーでシートの上を走らせたり。
 それから、大輝の作ってきてくれたサンドイッチやおにぎりのお昼を頂くと、風のない今日の気候に眠気に誘われた。

「ママー、青いねー」

 先にシートにごろりと寝転がった颯麻が、青い空を指差す。

「本当だな」

 言いながら、なぜか大輝もごろりとその横に転がった。

「ママもー!」

 言われ、私も颯麻の隣に寝転ぶ。

 聞こえる、どこかの家族の笑い声や泣き声。けれど、ぽかぽかと温かい日差しの下、私の視界に映るのは青い空だけ。

 不思議だ。
 あんなに、前に前にと急いていたのに。大輝の隣にいるためには、ちゃんと地に足着けて生きていけるようにならなきゃって思っていたのに。

 こうしたのんびりとした時間の中で、大輝と過ごす私は安心している。

 ――けれど、この心地よさは、甘えだ。

 そう思うと、こんなことしている場合じゃないと急に心が焦りだす。身体を起こし振り返ると、まだ寝転がったままの大輝と目が合った。

「颯麻くん、寝ちゃったな」 

 大輝はどこから取り出したのか、ブランケットを颯麻にそっとかけてくれた。
< 131 / 249 >

この作品をシェア

pagetop