元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

17 ニセモノの父親

 それから、大輝とたわいもない話をしたり、お手洗いに逃げたりしながら。
 しばらくすると、むにゃむにゃと颯麻が目を覚ました。

「おぱよ、ママ」

 目をしゅぱしゅぱさせながら、颯麻が言う。

「おぱよ、だーち」

「おはよう」

 私たちにふにゃんと微笑む颯麻。
 けれど、次の瞬間には「あそぶー!」と靴を手に取り、私に履かせろと押し付けてくる。

「嘘でしょ、元気過ぎない!?」

「ははっ、颯麻くんは元気だなー」

 大輝はケラケラ笑いながら、靴を履く。

「俺とあそぼっか。梓桜はのんびりしててよ」

 靴を履かせていた私にそう言って、大輝は颯麻の手を取った。 

 芝の上で、他の子供たちと同じように走り回る颯麻。追いかける大輝は、颯麻を抱き上げ、また肩車をしたり、手を持ってぶらぶらしたり。私にはできないような、力を使った遊びをしてくれる。

 颯麻もご機嫌で、やっぱり颯麻はこんな風に遊びたかったのかな、と罪悪感に囚われる。私に、そういう遊びはできない。

 この子に、父親がいたら――
 なんて思うけれど、それは大輝じゃない。

 胸の中に、漠然とそういう気持ちがある。
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