元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 駐車場に着き、チャイルドシートに颯麻を乗せる。

「帰る、ないー!」

 颯麻がそう言って駄々をこねるけれど、「もう帰るの」と言いながらミニカーを持たせてやる。それで少しは落ち着いて、その隙にベルトをさっと止めた。

 助手席に荷物を置いていた大輝と一瞬目が合って、微笑まれる。私はそんな大輝に何も返せず、慌てて車の反対側に回った。

 車が動き出す。すると息子はおとなしく、タイヤをくるくる回して遊び始めた。

「大輝、」

 ステアリングを握る、大輝の後頭部に話しかける。ルームミラー越しに、大輝と一瞬目が合った。

「さっきはごめん。大人げなかった」

 言いながら、俯いてしまう。

「大声出して、止めたりして」

 言いながら、自分の未熟さを思い知らされている。
 カッとなって、睨んでしまうなんて。
 もっと大人に対処できれば良かった。

「俺もさ、梓桜の気持ち考えないで、調子乗って悪かった」

 ステアリングを握る大輝とは、もう目が合わない。それで、私はほっとした。
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