元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「梓桜はチャイルドシート外してくれるか?」

「あ、うん」

 私の焦りも大輝はお見通しらしい。
 はぁ、とため息を吐き出して、チャイルドシートを大輝の車から外した。
 これは、後で私の車に戻さないと。

 よし、と意気込み、チャイルドシートを手に車を降りる。
 ふう、と息を吐き出して、笑顔を作る。
 うまく笑えているか、分からないけれど。

「大輝、ありがとうございました」

 颯麻と手をつなぐ。「大輝にバイバイしようね」と言いながら。

「梓桜……平気か?」

「あー、うん。元旦那から連絡来てただけ」

 無理やりに口角を引き上げて、大輝に伝える。

「そっか。力になれること――」

「大丈夫! これは私の問題だし、大輝巻き込むわけにいかないよ」

 慌てて言えば、大輝は悲しそうな目元のまま笑った。

「ごめん、ナイーブな話だった。首ツッコむべきじゃねーな」

「気持ちだけ、受け取っておく。ありがと」
「だーち、ばいばーい!」

 私が頭を下げると、それを別れの挨拶だと勘違いしたらしい颯麻が手を振る。

「おう、またな!」

 そう言って大輝は軽く手を挙げ、車に乗り込む。そのまま来た道を去って行った。
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