パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 けれど、それから二週間経っても、引越し先の部屋は見つからなかった。

「引っ越しシーズンでもあるのでね、この時期は難しいですね……」

 仲介業者さんも私の提示した条件に「うーん」と頭をひねるばかりだ。

「見つかり次第、いつでも連絡ください」

 仲介業者さんに頭を下げ、車で帰宅した日曜日の午後。

 家の前に、誰かが立っていた。

 玄関の前で、家を見つめて、手をインターフォンに伸ばしては引っ込める人物。

 私の運転する車に気づいたらしい。
 彼がこちらを振り向き、私は思わずステアリングをぎゅっと握った。
 そこに立っていたのは、元旦那だった。
< 145 / 249 >

この作品をシェア

pagetop