パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 実家の玄関が開いた。
 母が出てくる。

「ああ、お義母さん。ご無沙汰しております」

 玄関の音に気づいた彼が振り返り、母に頭を下げる。
 母はむっとした顔をした。

「とりあえず、車停めたいからどいてくれる?」

 震える声でそう言うと、元旦那は玄関の門の前まで移動した。

 車を停め、後部座席に乗せていた颯麻を抱き上げた。
 私が玄関前まで行くと、それまで黙っていた母が口を開く。

「あなた、今更何をしに来たの?」

 明らかに不機嫌さを顔に出し、堂々と母が言う。

「梓桜さんとお話ししたくて、どうにか会話できるようにとここまで来ました」

「お母さん、外で話してくるから――颯麻、見ていてもらってもいい?」

 私のことだ。私自身が決着をつけたい。
 きっと、養育費や慰謝料のことだろう。
 今、言葉を吸収している最中の颯麻に、この話を聞かせたくない。

 母がはあ、とため息をつく。

「うちでいいじゃない。ほら、入りなさい」

 母がそう言って中に私たちを促したから、私はそれに従うしかなくなってしまった。
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