元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

20 私にできること

 元旦那が去って行った。

「ママ?」

 腕の中の颯麻に言われ、はっとした。
 慌てて抱擁を解くと、颯麻は何もなかったかのように床の上にミニカーを転がして遊びだす。

 そんな息子を眺めながら、私は何もできなかった自分を恨んだ。
 どうして私は、何もできないんだろう。

 それでも、時間は止まってはくれない。
 夕飯の準備をして、颯麻をお風呂に入れて、寝かせなければならない。
 明日は仕事だ。

「今日くらい、夕飯の支度任せなさいよ」

「ううん、やる。やらなきゃ」

 母の提案を押し切り、立ち上がりのろのろとキッチンに向かった。
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