元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 けれど、息子は相変わらず「これはー、化学車!」「これはー、救急車ー!」など知識を披露するように大声を出す。

 この本だけ借りて、さっさと帰ろう。
 そう思い、ずかんをパタンと閉じた。

「借りて帰ろうね」

 けれど。

「ダメ! 帰る、ダメ! ダーメ―!」

 息子は大声を出し、泣きながら、私が手にしたずかんを奪い取る。

「見るー! くるま、見るー!」

 泣きながら、先ほどの体勢に持っていこうとする。

 私が手を焼いている、最近の息子の行動。
 俗にいう、イヤイヤ期というやつだろう。

 ため息をこぼし、「お家に持って帰ってみようね」と提案するように言うも、息子はううんと首を横に振る。

「でも、図書館でうるさくしたらダメなの。お家なら、大きな声出してもいいから……」

「ダメー! ダメダメダメー!」

 また出した大声に、暴れ出す息子。
 私の中のイライラのゲージも、振り切れそうになる。

「もう、静かにしなさい!」

 言っても仕方ないと分かっていても、つい声が出てしまう。
 息子から本を奪い取り、息子の靴をさっと鞄にしまう。そのまま暴れる息子を抱えて、貸出カウンターへと向かった。
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