元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「お母さん! お父さん!?」

 飛び出した先で、二人の存在を確かめる。
 けれど、そこに両親の姿は見当たらない。

「どこ!? まだ中にいるの!?」

 キッチンと、父母の眠る客間は壁を隔てたすぐ隣。
 父の設計した自慢の我が家が木造なのは、建築過程を子供の頃に見ていたから知っている。

 まだ外にいないのなら、足の悪い父は逃げられるのか。
 母はそんな父と共に、逃げられるのか。

 家の周りを一周して、両親がいないか確かめる。
 キッチン横の勝手口から煙があがっている。

「梓桜ちゃん!?」

 振り返った先にいたのは、隣の家に住むおばさんだった。

「両親がまだ中にいるはずなんです。颯麻をお願いします!」

 颯麻をおばさんに押し付け、どうにか父母を助けようと頭を回す。
 あっち側のガラス窓を割って、中に入れば――。

 けれど、おばさんは颯麻を受け取ってはくれない。

「行ったらだめ、梓桜ちゃんが危ないじゃない!」
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