元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

21 鎮火と救助と火事の真実

 我が家に向けられるホースの放水、せわしなく動く消防隊員。
 張られた規制線の前で、その様子をじっと見ていた。

 不安で、心配で、後悔と絶望に押しつぶされながら、なんとかこの子だけは支えようと、必死に颯麻を抱きかかえ、足を踏ん張る。
 そうやって自分を奮い立たせないと、すぐに崩れて倒れてしまいそうだった。

 どうか、生きていて。
 どうか、助けて。

 必死に消火活動をしている隊員さんたちに、そう祈る。

 大輝だけじゃない。大輝を慕う後輩の橋本さんも、あの日イベントでお世話になった隊員さんたちもみんな。
 どうか、うちの両親を助けてください。

 泣いてる場合じゃないのに、泣きそうになる。
 歯を食いしばって、でも燃えていく家を見るのはやっぱり悔しくて。

「お父さん、お母さん、ごめんね……」

 小声でつぶやいた。
 その時だった。

「二名、保護!」

 誰かの大きな太い声に、はっと目を凝らす。
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