パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 ――お母さん、お父さん……っ!

 オレンジの背中に背負われているのは、父。
 オレンジの防火服に支えられ、歩いているのは母だ。

「お母さん! お父さん!」

 規制線をくぐり、二人の元に駆け寄った。
 父と母は、そのまま端に停められていた救急車の元へと連れられていく。

「良かった、お母さん、お父さん……」

 父をおぶる、オレンジ色の防火服。防護マスクの向こう、目元しか見えないけれど、彼は間違いなく大輝だった。

 こちらに向けられるのは、まるで「大丈夫って言ったろ?」と言わんばかりのお日さまみたいな笑顔。

「大輝、ありがとう……」

 涙が、止まらなくなった。
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