元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 気付けば、5台の消防車が駆け付け、それぞれ消火に当たっていた。私は、呆然としながら、でも足を踏ん張って、その光景を眺めていた。

 両親が助かった安堵で腰が抜けそうになるが、火が消えるまでは私はここにいなきゃいけない。
 颯麻が「ポンプ車ー」「お水、ジャー」と無邪気に騒ぐ声で、逆に心が落ち着いた。

 やがて鎮火したと消防隊員に告げられ、まだ白い煙の上る自宅に近づいた。

 外壁は姿を残しているけれど、焼け焦げた何かの、鼻を割くような異臭がする。
 耐火性の壁のおかげなのか放水のおかげなのか、周りの家には火の手が回らなかった。

 私は警察と消防に、逃げるまでの話をした。

 近隣住人は皆、自分の家に戻っていく。
 隣の家のおばさんが残ってくれて、私の聴取の間、一通り騒いで眠くなった颯麻を抱っこしてあやしてくれていた。

 消防車は徐々に減っていき、今は一台のポンプ車とパトカーが一台停まっているだけ。
 そんな中、私は不意に、見知った顔を見つけた。

「嘘でしょ……」

「どうかしましたか?」

 警察官のその質問が、耳を通り抜けていく。
 いるはずのない人がそこにいることに、頭から血の気が引いていった。
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