元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
征耶(まさや)……」

 久しぶりにその名を呼んだ。
 意識して、呼ばないようにしてたのに。

 彼がこちらを振り向く。けれど、そのままくるりと向こうを向いて、走り出そうとする。

「待って!」

 私の声に、オレンジの消防士さんが彼の前にさっと回り込んだ。
 私も急いで彼の元へ駆ける。

「どうして、ここに、いるの……?」

 私の震える声に反応し、おもむろにこちらを振り返るのは、やはり元旦那だった。なぜか、青い顔をしている。

「梓桜、誰?」

 彼の行く手を止めてくれたのは、まだ防火衣とヘルメットに身を包んでいる、大輝だった。
 険しい顔をして、鋭い視線を元旦那に向けている。

「……元、旦那」

 大輝には言いたくなくて、でも言わなきゃいけなくて。仕方なく口にすると、大輝は一層、眉間の皺を深めた。
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