元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「……、帰ったんじゃ、なかったの?」

「『帰った』って、まさか会ってたのか!?」

 元旦那に聞いたのに、大輝が口を挟んだ。

「うん……」

 言うと、大輝は険しい顔つきのまま、青ざめたままの元旦那に向かってなぜか鼻をクンクンさせる。

「お前――」

「こんなつもりじゃなかったんだよ!」

 急に元旦那が声を荒げた。
 その大声に、私を聴取していた警察と消防士さんもこちらに駆け付けてきた。

「こんなつもりって……」

 嫌な予感がする。
 心臓がドクドクと、嫌な音を鳴らす。

「そもそも、お前があの部屋で寝てねーからいけねーんだ!」

 元旦那は私の方を向いてそこまで言うと、急に口ごもってしまう。
 彼の背後で、大輝は怖い顔をして腕を組んでいた。

「あの部屋って、何? どういうこと?」

「いつもあの部屋で寝てたじゃねーか。なのにお前いないし、代わりに両親が寝てるし! だから、俺……俺……――」

 そこまで言って、旦那は膝から崩れ落ちる。

「なのに、みんな生きてて……俺、ほっとしてる。ごめんな、梓桜」

「ごめんって、何だよ」

 そう言ったのは、大輝だった。

「お前、やたらガソリン臭い。スタンド勤務じゃねーと匂わねーよ、そんなに」

 大輝は、ごみを見るような目で元旦那を見下ろしていた。
< 169 / 249 >

この作品をシェア

pagetop