元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「お前、誰だよ……」

 振り返った元旦那が、力なく言う。

「見ればわかんだろ消防職員だ」

 大輝が、腕を組んだまま彼を見下す。

「消防士に言われたら仕方ないな……、そうだよ俺がやった」

「てめえ、人の家に火つけていいと思ってんのか!」

 元旦那が言い捨てるのと同時に、大輝が元旦那につかみかかろうとする。
 けれど、私の後ろから伸びてきた手がそれを制した。先ほどまで、私を聴取していた消防士さんだ。

 大輝は悔しそうに手を引っ込めて、代わりに警察官が元旦那の元へ行く。

「署までご同行願えますか?」

 そう言われた旦那は「はい」と力なく立ち上がり、警察官に連れられパトカーの方へ。

 そんな元旦那を見ていたら、悔しくなった。

 どうして私は、こんな人を好きになってしまったんだろう。
 こんな人を好きだと思った、こんな人と結婚した、過去の自分を恨む。

 でも、どんなに悔しくても、過去は変えられない。
 ならば未来を、少しでも自分の手で変えたい――。

「すみません、少しだけいいですか?」

 元旦那が私の横を通ろうとして、声を掛けた。
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