元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 警察官は私に目くばせをする。

「何?」

 元旦那が、こちらに「今更言うことなんてねーだろ」と悲しい瞳を向ける。
 ごくりと唾を飲んだ。

 ――負けるな、私。

 両こぶしをぐっと握り、自分を奮い立たせる。

「私、あなたとは復縁できない」

 泣きそうになりながら紡いだ言葉は、思いのほか小さい。けれど、奥歯を噛み、堪える。

 すると、突然何かに腰を抱き寄せられる。はっと横を見た。

 分厚い防火服の下で、しっかりと私の腰を抱いてくれる大輝。顔を上げると、「大丈夫だ」というように目くばせをしてくれる。

 だから、私もそんな大輝に頷いて。握った拳を弛め、それでも目に力を込めて、元旦那と目を合わせた。

「私の前に――あの子の前に、現れないでほしい。あなたは、父親だけど、父親じゃない」

「……分かったよ。っつーか、これだけの大事になったら、いくらバカだって自分のしたことの間違いに気づかされる」

 元旦那はため息を吐き捨て、それから私の腰を抱く大輝を見上げた。
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