元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「大丈夫か、梓桜」

「あ、うん……」

 ぼうっとしていた。大輝に言われ、無理やりに笑顔を浮かべた。全然うまく笑えなかったけれど。

「ありがとうね、色々……」

 私はまだ、今のこの気持ちのモヤモヤを整理できていない。
 けれど、大輝が私に勇気をくれたのは、間違いない。

「おう」

 複雑そうな顔をした大輝は、辺りをキョロキョロと見回して。

「行くとこあるか? とりあえず、今だけでも――」

「梓桜ちゃん、息子くんも寒いだろうから、とりあえずうちにいらっしゃい。そこでいったん落ち着きましょう」

 颯麻を抱っこしてくれていた、隣のおばさんが後ろから声をかけてくれた。

「救護者の身の安全確認、OKです」

 大輝が隣にいた消防士さんに告げる。

「佐岡、戻るぞ」

 いつの間にか、消防職員さんたちは皆消防車両に乗り込んでいる。

「戻ったら連絡すっから」

「うん……」

 大輝は消防士さんと共に、ポンプ車に乗り込み去ってゆく。
 私はおばさんの家に、上がらせてもらった。
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