元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

22 現実を目の前にして

 おばさんの家のリビングは、実家の庭に面している。

 おばさんはまだ日が昇っていないのに、雨戸をあけてくれた。
 ソファに座るよう促され、私は家の見える場所に、深く眠ってしまった颯麻を抱えて座った。

 規則正しく胸を上下させる颯麻。
 それを見ているだけで、徐々に心が凪いでくる。

 確かな颯麻の温もりを感じながら、窓の外に目線を移した。街灯に照らされた実家は、漆黒の闇に溶けてしまったように黒い。

「どうぞ、飲んで落ち着いて」

 おばさんは私の前に、温かい紅茶を置いてくれた。

「何もないところだけれど、梓桜ちゃんも横になってもいいからね」

「はい、ありがとうございます……」

 颯麻の頭を胸に凭れさせ、背中を支えて紅茶を頂いた。
 ちゃんと喉を通って、その温かさに優しさを感じ、余計に自分の情けなさと申し訳なさが際立つようだった。
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