パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 一人で何でもできる人間になりたいと思っていたのに、私が今までしてきたことは、周りの皆を巻き込む不幸だった。

 離婚したせいで。
 実家に帰ってきたせいで。
 あんな人と、結婚したせいで。

 もちろん、元旦那が悪いんだと分かってはいる。けれど、自分は絶対的に正しかったのだとはどうしても思えなかった。

 あの人を選び、付き合い、颯麻を身ごもり、結婚したのは私なのだ。

 私があの人を選んだから、両親を巻き込んだ。
 私があの人を選んだから、大輝に心配も迷惑もかけた。
 私があの人を選んだから、今この現実が目の前にある。

 私があの人を選んだから、おばさんだって――

 優しくしてくれた人を不幸にする私。
 だから余計に、周りの人の温かさが、苦しい。

 自分がダメになっていく。

 ため息をもらした先には、あの人との子どもである颯麻がいる。
 この子のことは、心から大切だと思うのに。

 おばさんは気を遣ってくれたのか、どこか違う部屋に行ってしまったらしい。
 一人、颯麻の寝息を聞きながら、私はどうするでもなく、ただ静かに涙を流した。
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