元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 今は3月初め。昼間はだいぶ温かくなったが、朝はまだ寒い。

「寒いねー」

 そう言う颯麻を毛布にくるんで、実家の玄関を開いた。何とも言えない強烈な匂いが鼻をつんざいて、私は思わず顔をしかめた。

「ママ―、くちゃいー」

 颯麻も言う。
 けれど、そんなことより、目の前に広がっていた光景に絶望した。

 初期消火の間に合わなかった我が家は、玄関先より左はなんとか燃え残っている。けれど、キッチンのある右側と、そこにつながるダイニングは真っ黒になっている。

 外側からは分からなかったが、とても住めるような状態ではなかった。
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