元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「颯麻、どうしようね」

 外に出て、息子を抱えた手を、まるで赤ん坊をあやすように揺らした。

 どうしていいのかも分からず、何をしていいのかも分からない。こんな時に無力な自分を実感し、途方に暮れ、まだ2歳の息子に話しかけてしまう。

「ねー」

 無邪気に笑う颯麻は、まだ事の大きさが分かっていないようだ。無邪気に笑いながら、「寒いねー、朝だねー」と言う。

 寒いよね。ごめんね。
 スマホもない、着る服もない。
 何もかもが、この家の中だ。

 慌てて飛び出したから、颯麻こ足元は裸足。
 玄関でさっと探したけれど、子供の靴の所在は分からなくなっていた。

 不甲斐ない。
 親として、この子を守ってあげなきゃいけないのに。
 人としてダメ。
 親としてもダメ。

 全然だめだ。

 苦しくて、悲しくて、この子の前では泣きたくないのに、こみ上げてきたものが私の目頭を熱くする。
 そんな中、車のエンジンの音が聞こえてきた。
 目に入ったのは、黒いSUV。

 間違いない。
 あれは、大輝の車だ。
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