元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 女性職員さんの優しい笑顔に、思わず涙が溢れてしまった。

「すみません」と言おうとして、息子が「ポンプ車ー!」と先に声を上げた。

「こら、シーって言ったでしょ!」

 小声でしかるけれど、息子のイヤイヤがすっかり収まっていることに気づいた。

「いいんですよ、このくらい」

 女性は言いながら、息子の指差した先を辿る。

「そうだね、消防ポンプ車だね。すごいね、良く知ってるね」

 息子は言われて、得意げに微笑んで、でも恥ずかしかったのか私の胸に顔をうずめてしまった。

 女性は息子のそんな様子にふふっと微笑み、私に微笑みを向けてくれた。

「ミニポンプ車に乗れるイベントもあるんです。お母さんの気分転換にもなると思うし、お子さんすごく好きそうだなと思ってお声かけさせてもらったんですけれど。――ご迷惑だったかしら?」

「いえ……」

 また涙が溢れそうになって、慌てて「ありがとうございます」とお礼を伝えて図書館を出た。

「ママ、ポンプ車! 行く!」

 腕の中で、すっかりご機嫌になった息子がそう言ってチラシを握り締めていた。
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