パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 颯麻を送り届けたその足で、とりあえず衣服と食料を買いに行った。
 お金は大輝に立て替えてもらい、着替えを済ませて家に戻る。

 消防署の車がやってきていた。

「署長! お疲れ様です!」

 大輝が挨拶して、彼はこちらを向く。
 署長と呼ばれた彼は「佐岡か」と呟き、それからこちらに真剣な顔を向けた。

「昨夜暗くてできなかった、現場検証に入らせていただきますね」

 署長さんが我が家に入っていく。
 その間に、大輝に言われて、実家のライフラインを止める手続きを進めた。
 スマホは大輝に借りた。

「ごめんね、大輝に頼ってばっかりで――」

「まあ、こういうのは経験だから。人生で火事に遭うことなんて普通はそんなにないし、だったら知ってる人が教えるのは当然だろ」

 彼は頼りになる、消防士さん(私のヒーロー)だ。

 しばらくすると、隣の家からおばさんが出てきた。

「梓桜ちゃん! 今ね、うちに病院から連絡があって――」

 どうやら、母がおばさんの電話番号を病院に教えたらしい。
 父と母は、検査のために一日入院し、問題がなければ退院するという。

 ほっと安堵の息をつく私に、大輝はそっと寄り添ってくれていた。
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