元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 現場検証の間、私はやってきた警察官により聴取を受けていた。
 主に元旦那とのこと、それから元旦那の犯行の動機についてだった。

 大輝は署長さんと何か話したり、実家の中を覗いたりしている。

「犯行の動機について、何か心当たり――」

 私は昨日のことを話した。
 隣のおばさんの家で泣き、大輝に抱かれて大泣きした分、私の心は凪いでいた。
 おかげで、冷静に事実を話すことができた。

 警察側からは、元旦那の供述も聞くことができた。

 不倫していた相手と別れ、イライラしていたこと。
 家事がはかどらず、お金の使い方も荒くなっていったこと。
 それで、復縁を迫り、断られた腹いせに火をつけたこと――。

 聞けば聞くほど、身勝手な元旦那に失望した。
 同時に、そんな人を選んでしまった自分の選択に情けなさが募った。

「またなにかありましたらご協力願います」

 警察官がそう言って、去って行った。

 ふう、と肩の荷が下り、余計にやるせなさでため息を零し。
 そんな中、もうとうに昼を過ぎていたらしい。
 ちらりと覗いた大輝のスマホは、午後2時を表示していた。

「梓桜、大丈夫か?」

 聴取が終わったタイミングで、大輝が声をかけてくれた。
 現場検証はもう終わったらしく、大輝は焼けて壊れてしまった勝手口をブルーシートで覆う、応急処置をしてくれていた。

「うん……ありがとう、何もかも」

「いや、いいって。こういうのは、背の高い男の仕事。中のものとか気になるだろうけど、今は一旦これで、な」

 大輝がそう言ってくれると、本当に大丈夫な気がした。
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