元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 颯麻のお迎えに行き、車はそのまま大輝の家に向かう。

「大輝、本当にいいの?」

「この期に及んでまだそれ言う?」

 大輝が笑いながら言うから、私の気持ちも軽くなる。

「だって、あの家は――」

 大輝の大切な思い出の場所でしょ。
 言おうとして、大輝に遮られてしまった。

「だからこそ、だよ」

 ステアリングを握る大輝の顔は、後部座席からでは見えない。
 けれど、その声に込められた響きが、哀愁を含んでいるような気がして。

「でも本当にいいからね、私なんか家を探そうと思ってたところだったし、大輝の家は一時的なものってことで、うちの親だってきっと――」

「おじさんの足のことも心配だろ? 狭くて慣れない公営住宅とか、ホテル住まいより、うちなら全然いい。気兼ねなくいてもらって構わない」

「でも――」

 申し訳ない。
 昨日から、ずっと大輝に甘えっぱなしだ。
 今だって、現に大輝は運転しながら、時折あくびを零している。

 無理をさせている。
 私の、私の家族のせいで。

 大輝がそばにいてくれるのは、ものすごく心強い。
 けれど、このままでは、前の私と同じだ。
 このまま、甘えっぱなしにならないように。

 『でも』の先は飲み込んで、代わりに「――頑張るね」と小声で言った。なんとなく、大輝に訊かれるのは恥ずかしかった。
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