元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「15センチ。いける?」

「いける! 全然いける、けど……」

 これはきっと、大輝のご両親が、大切に取っておいてくれたもの。
 颯麻にいつまでも靴がないのは困るけれど、でも――

「ほら、そんな顔しない。いーの、どうせ俺のお古だから」

 大輝は立ち上がり、私のおでこを小突いた。

「颯麻くん、お靴これでいいかなぁ?」

「はくー! 赤! かーっこいい!」

「消防車の色だぞ!」

「やったー!」

 大輝はきっと、買い物のときからずっと考えていたのだろう。
 だから今、さっとこうして行動してくれているわけで。

「ありがとう……」

 玄関に並べておいてくれる大輝に、私はそれしか言えない。

「それから、颯麻くんにはこれも」

 そう言うと、大輝はポケットをガサゴソと漁り、中から何かを取り出す。
  開いて見せてくれた、大輝の大きな手のひらの上に乗ったもの。
 それは――

「ポンプ車ー!」

 颯麻の、ミニカーたちだった。

「残ってたから。颯麻くんには、これが大事だろ?」

 颯麻はさっそくミニカーに手を伸ばし、両手に持つ。
 そんな颯麻に、大輝はニカっとお日さまみたいな笑顔を向ける。

「大輝……」

 大輝の優しさと、何もできない申し訳なさと、颯麻のことまで考えてくれている情の深さに、また涙が溢れそうになる。
 下唇を噛んで堪えていると、暢気な声が腕の中から聞こえた。

「ママ―、ごはんはー?」
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