元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 大輝の家に来たのは初めてではないけれど、キッチンに立つのは初めてだ。
 にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、ブロッコリー。冷蔵庫の食材を拝借して、切っていく。

 ピー、ピーと音が鳴る。ご飯が炊けたらしい。炒めて煮込んでルーを加え、カレーライスを作った。

「ん、良い香り」

 大輝が颯麻を抱っこして、キッチンに様子を見に来る。

「カレー!」

 颯麻がお鍋の中を指差した。

「ありがとな。梓桜の手料理食べれるなんて、俺マジ幸せ」

 へへっと笑う大輝に、申し出たのは私なのにと思い出す。

 先ほど、玄関で颯麻にミニカーを手渡してくれた大輝。そんな彼になにかしてあげたいと、せめて夕飯づくりを申し出た。

「大輝の好きなものって何?」

「カレー。……甘いの」

「じゃあ、カレー作るね」

「マジで!?」

 そう言って目を輝かせた大輝は、ちょっとだけあどけなかった。
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