元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 自宅に戻ると、庭には案の定大輝のSUVがまだ停まっていた。

 大輝が玄関から出てきて、こちらに手を上げる。消防士さんらしい、分厚いグローブを嵌めた手で。

「おかえり、梓桜。おじさんと、おばさんも」

 車を降りようとする私たちに、大輝が太陽みたいにニカっと笑う。
 その爽やかすぎる笑顔は、きっと私たちへの気遣いだと思う。

「大輝くん、ありがとうね、こんなに……」

「いえいえ」

 母の言葉にも、大輝は笑って答える。

「日用品系はほとんど水濡れと異臭でダメですね。取り出せるのお金とか、貴金属とか。場所を教えてもらえれば、俺取ってくるんで――」

「大輝くん」

 車のドアを開け、その座席に座ったままの父が静かに口を開いた。

「おじさん! お元気そうで良かったです!」

 大輝はまたニカっと笑う。
 そんな大輝と対照的に、神妙な面持ちの父に大輝も笑顔を収めて真剣な顔をする。

「表は焼けていない。けれど、とても住める状態じゃないと、娘に訊いたよ」

「まあ、そうっすね……。残念ですけど」

 大輝がふっと顔を曇らせ、俯く。

「君が、家の片付けも応急処置もしてくれたんだってね」

「俺も消防士ですからね。こういうのは慣れて――」

「そのうえでおこがましいのは重々承知なのだけれど、しばらくの間君のお宅にお世話になってもいいだろうか?」
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