パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 父の言葉に、大輝ははっと顔を上げた。

「もちろんですよ! むしろ一軒家に一人暮らしで俺一人じゃ広すぎるくらいなんで! 来てください!」

 途端に笑顔になる大輝。
 父の目には、ほんのりと涙が浮かんでいる。

「大輝くん……本当に、本当にありがとう」

 私の隣にいた母が言い、大輝はこちらに向かってニカっと笑う。

「いいですって。困ったときはお互い様ですし。それに――」

 大輝は私の方を向く。

「これも全部、俺にとってはあの日のお返しだから」

「え……?」

「あの日、梓桜が俺にくれたものはそれだけ俺にとって大きかったってこと」

 大輝はそう言って、照れくさそうに私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。

「わー、もう!」

 そんな私たちを、父母がにこやかに見ていた。
 こんな状態でも、みんなで笑えるのは、絶対に大輝のおかげだ。

 昼下がりの温かい日差しの下、そう思った。
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