パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「颯麻くんは? もう寝た?」

「うん……」

 言いながら、少し緊張しながら大輝の部屋に入る。

 ――高校の頃と、同じだ。

 腰を下ろした場所に既視感があって、懐かしい気持ちと甘酸っぱい気持ちが胸にやってくる。

 そんな思い出に浸りにきたんじゃない。
 私はスウェット姿でまだ髪の濡れている大輝を前に、早速口火を切った。

「大輝、無理してない?」

「はぁ? そんなことねーって」

 首にかけたタオルで髪をごしごし拭いながら、大輝はニカっと笑う。

「緊張しながら入ってきたから、ついに告白の返事でもしてくれんのかと思ったー」

 大輝は隣の部屋で寝ている颯麻に気を遣ったのか、小声でケラケラ笑った。

「もう、茶化さないでよ」

 拗ねるように言えば「ごめんごめん」と笑う。

「大輝、ずっと笑ってるじゃん? この家に私たちが来てから、至れり尽くせりって感じだし。大輝のお仕事ってすごく神経使う、気を張る仕事だって分かってるから、余計に申し訳なくなっちゃって――」

 言いながら俯きそうになり、慌てて頭を振って大輝の方を向いた。
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