パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 次の日は土曜日。
 大輝は日勤での出勤で、朝から仕事へ向かった。

 塩沢家は、皆で実家の様子を見に来ていた。
 父が、実家の解体が終わったという連絡を受けたのだ。

 庭の芝があったところまで、綺麗に更地になった場所。ここに、私が幼いころに父が設計した、あの家が建っていた。
 思ったよりも狭い。家の中にいた時は、広いと思っていたのに。

「お家、どこー?」

 颯麻がそう言って更地の中に入っていく。母は感傷に浸るように、じっと家のあったその場所を眺めている。父は感傷に浸るまもなく、業者の人と話していた。

「颯麻、あんまり遠く行かないでね」

 言いながら、私の颯麻に駆け寄る。
 颯麻は更地内の石を拾って遊び始めた。

「これはー、お家の、石!」

 そう言って、私に小さな石を手渡してくれる。

「ばあばも、どーぞ」

 颯麻の言葉にはっとした母は、しゃがんで颯麻から小石を受け取る。

「これはー、じいじの!」

 そう言って掲げたのは、ころんとした10円玉くらいの小石。業者の人との話が終わった父に、颯麻はすぐにそれを渡しに行った。
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