パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「この家ね、付き合っていた頃――高校生の頃に来たことがあるの。大輝のご両親も、私を温かく迎えてくれた。この場所でね、二人が笑って、私を歓迎してくれてた」

「うん」と、静かに母が相槌を打ってくれる。

「そんなご家族がいたこの場所をね、私たちが奪っちゃったような気がしてる。ずっと……」

 写真の中の二人は笑っている。
 それが余計に、辛い。

「そうね、大輝くんにとってはここは、家族との場所だものね」

「うん……だからね」

 私は母の方を向いた。
 父にも目くばせをした。

「あと4か月、塩沢家が竣工するまでさ、大輝に甘えないようにしたくて。ここに住まわせてもらってるだけで、精一杯甘えてるんだから。でも、だからって大輝は腫物みたいに扱われるのは、好きじゃないと思うから――」

「いつも通り、ね」

 母が言う。こくり、と頷くと、父も母も同じように頷いてくれた。

「それでね、私――」

 私は母に、父にもう一度目線を合わせる。

「――私もね、同じくらいまでにちゃんと部屋見つけて、家を出れるようにする。ちゃんと一人で立って生きていきたいの」

 ――甘えてばかりの私じゃダメ。一人で生きていけるようにって、私は離婚したあの日に誓ったんだ。それは、今も変わらない。

 ちゃんと一人で立って生きていく。
 それができたら、大輝の気持ちを受け取りたい。

 皆までは言えなかったけれど、なりたい自分になるために。頑張りたいと、父母に伝えたかった。
 
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