パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 けれど、消防士さんたちはみなにこやか。
 前の子供たちがポンプ車を降りたタイミングで、「颯麻くんどうぞ」とこちらに来てくれた。

「颯麻、ポンプ車乗れるよ!」

 それでももじもじしている颯麻。
 すると、消防士さんが颯麻の両脇を後ろからひょいっと持ち上げた。

 大輝(だいき)だった。

「ママに甘えてるうちはなー、立派な消防士になれないぞー」

 なんて爽やかな笑顔で颯麻に言い、そのままミニポンプ車の上にポスンと息子を着地させる。
 息子はぽかんとしながらも、急に目の前に現れた真っ赤なボディに、そしてそれに乗っていると言う事実を徐々に理解したらしい。

「ポンプ車ー!」

 大声を上げ、ニコリと笑う。
 そんな息子を落ちないように、大輝が隣で見ていてくれる。

「ほら梓桜(あずさ)、シャッターチャーンス!」

 大輝に言われ、「あ、うん!」と慌ててカメラを構えた。
 覚えたてのピースをこちらに向けた息子。
 カシャっとシャッターを切る。
 その写真の隅には、笑顔で息子を見守る大輝が映っていた。
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