パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「俺のこと、好きって……それは、どういう意味で?」

「え?」

 キョトンとして、変な声が出た。

「ほら、人としてなのか、――男としてなのか、どっちなんかなーって」

 言いながら、大輝は口元を隠してそっぽを向いてしまう。

 ――照れてる。

 そんな姿を、愛おしいと思ってしまうくらい、私は――

「男性として、好き」

 言った瞬間に、大輝の腕がこちらに伸びてくる。
 え? と思った時には、がっちりとした胸板と、大きな腕に包まれていた。

 大輝に、抱きしめられている。
 大好きな、温かいぬくもりに。

 今は泣いていない。
 ただ、大輝のぬくもりと、その胸板の向こうからドクドクという音が聞こえるだけだ。

「梓桜は『俺の隣に並べる、ふさわしい女』になるっつったけどさ」

 大輝の声が、上から降ってくる。

「そんなの、もうとっくの昔になってんだろ」

 大輝の腕の力が強まる。
 ぎゅっと強く抱きしめられて、大好きだと思う。
 けれど。

「なってない。全然なれてない。私はまだまだ――」

「それでも、俺には十分。っつーか俺のセリフだろ」

 大輝は言いながら、腕の力を弛める。
 顔を上げると、間近で大輝と視線がかち合った。
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