パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「梓桜は、親としても、女としても、人としても、ちゃんとしてる。再会して、頑張ってる梓桜見て、俺も頑張ろうって思ったくらい」

「そんなこと――」

「『ない』なんて言わせない。っつーかそもそも、俺があの日――両親が死んだ日、肩肘張って無理やり笑ってた俺が、お前のおかげでどれだけ救われたか。その日から、俺の目標はずっと梓桜なんだから」

 言われ、思わず顔を背けてしまった。

「違うの、あの日の私は、大輝みたいになりたくて、ちょっと背伸びして大人ぶってただけなの!」

 言いながら、大輝の胸を押し返してしまう。
 けれど、大輝の力の方が強くて、私は大輝の腕の中から逃れることはできない。

「そうだとしても、梓桜が考えてしてくれたことだろ?」

「違――」

「違わない。たとえ大人ぶってただけだとしても、俺にとっては唯一の心の拠り所だった」

 言おうとした言葉は全て大輝に否定されてしまう。

「梓桜は周りを良く見てて、相手の気持ち考えて、行動できる優しい人。再会しても、梓桜のそういうとこ変わってねーなって、思ってた」

「私は優しくなんてないよ。何もできないから、甘えてるだけで――」

「違う。梓桜は優しすぎて、自分の心を犠牲にしてるだけだ」

 私と目を無理やりに合わせて、真剣な瞳でそう言った。
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