元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「犠牲になんて――」

「してる。そもそも梓桜が言ってる甘えって、甘えじゃない。俺に甘えてるとか、してもらってばっかりとか言うけどさ。努力してないくせに頼ってくるやつを『甘え』っていうんだよ。

 梓桜のそれは、『甘えてる』じゃなくて『頼ってる』。『甘えない』は格好いいけれど、『頼らない』は独りよがりだからな 」

 はっとした。
 私のしようとしてたことは、独りよがり――。

「並ぶ資格がうんたらって梓桜言ったけど、それも独りよがりだからな。俺が並んでって言ったら、並べるの。っつーか、隣にいて欲しいのは俺の方だから」

 怒ったような、諭すような強い口調。
 なのに、私の胸は何かから解放されたように、じわんと温かさが広がっていく。
 気づけば、こみ上げたものが両目から流れていた。

「今の私に、幻滅しない?」

「は? 幻滅? するわけない。むしろ希望。夢。憧れ。梓桜はずっと、俺の特別な人」

「大輝……うぅ……」

 また、泣いてしまった。
 けれど、今度は自分から抱き着いた。

「俺さ、この仕事してて、やっぱり出動の時は毎回怖いんだ。自分がいるのに、誰かを助けられなかったらって。

 でも、あの日梓桜がああやって、俺の気持ち汲んでくれたから。あの時の梓桜みたいに、誰かを助けられるようになりたいって使命感で、今の仕事してる」
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