元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 大輝は抱き着いた私を、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。

「あの日、梓桜が守ってくれたのは、助けてくれたのは、俺自身なんだよ。俺の心なんだよ。梓桜はそんな風に強くて格好良くて、魅力的で優しい女。卑下するなよ」

 大好きだと思った。
 愛しいと思った。

 大輝が言ってくれて、気が付いた。
 私は、結婚生活の中で裏切られて、独りぼっちで、自分に自信が無くなって、臆病になっていたのかもしれない。

 私は何ひとつ一人ではできない、ダメな人間だと思っていた。
 でも――

「梓桜は真面目すぎるから。だから高い目標を設定して、できない自分はダメなんだって思い込んでるだけだ。本当にダメな人間は、小さい人間はそんなこと思わない」

 大輝のその言葉に勇気づけられ、涙を拭い、顔を上げた。

「大輝……私、このままでもいいのかな?」

 すると大輝は、私の大好きな、お日さまみたいな爽やかで優しい笑みを浮かべて。

「いいに決まってる。っつーか、すこしくらい劣化していてくれた方が嬉しい。隣にいる俺が、その方が格好良く見えるから」

「何それ」

 ニカっと笑った大輝に、つられて笑ってしまった。

「大事な話だよ。隣にいる女の方がかっこいいだなんて、男としてのプライドが許さない」

 言いながらも、大輝は笑みを崩さない。
 崩さないんじゃない。きっと、心から笑ってる。だから、私も笑えるんだ。

 互いにクスクスと笑い合っていると、近づいてきた大輝のおでこが不意に私のそれにこつんと触れた。
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