パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「っつーことで、梓桜は出て行かなくていいです。家探すくらいなら、ここにいてください。彼氏からのお願いです」

 その言葉に思わずはっと顔を離してしまった。

「彼氏って……」

「違うの?」

 言いながら、大輝はまた顔を近づけてくる。

「いいの?」

「いいから言った。……好きなんだよ、もう、ずっと昔から。惚れてんだよ、会えなかった間も、ずっとずっと」

 のけ反った私に、大輝が覆いかぶさっている。
 にこやかなのに、その瞳から大輝の真剣さが伝わってくる。
 だから余計に、頬が熱くなる。

「……ずるいよ、そんなの。私だって――本当は、ずっと好きだった」

 言いながら、照れてしまって最後の方はちゃんと発音できたか分からない。
 けれど。

 ――そう、ずっと好きだった。
 ただ一人、ずっと忘れられない、初恋の人だった。
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