パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 思い出してしまえば、想いは溢れていく。

「大好きだった」

 こんな簡単な言葉じゃ、この気持ちは伝えられない。けれど、私の口から紡げるのは、たったそれだけで。

 だから、想いが伝わればいいなと、大輝の背に手を伸ばした。そのままぎゅっと、抱きついた。

 抱きしめ返され、愛しさが溢れる。分厚い胸板、たくましい腕。

 父を二度も助けてくれた、私の心も助けてくれた。大輝はやっぱり、太陽みたいな、私のヒーロー……。

 ドクドクと胸が鳴り、大輝からも同じ音が伝わってくる。そっと顔を上げれば、そこに大輝の優しく、ほんのり赤く染まった顔がある。

 見つめ合い、三秒。
 おもむろに、大輝の顔が近づいてくる。

 私は訪れるだろう口づけの予感に、そっと目を閉じた。
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