元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

28 大好きな人のために

 翌朝、起きてダイニングに向かうと、父がパソコンを覗いて目を丸くしていた。その顔は、僅かに青い。

「こりゃすごいな……」

「どうしたの?」

「いやぁ、あそこのゴミ処理会社。火事だって」

 父の声に、慌ててパソコンの画面を覗きこむ。

「どうしたんだ、梓桜」

「大輝がね、夜に緊急招集だって出てったから……」

 映し出されていたのは、建物からもくもくと上がる煙、オレンジ色に吹き出す炎。そして、そこに向かってホースを構え、放水する消防隊の姿。

「中に人はいないらしいが、心配だな」

 颯麻が「ヘリコプター」と言って窓の外を指差す。この映像は、きっとあのヘリコプターが撮ったのだろう。

 私の足は勝手に動いた。サンルームに身を乗り出し、街中に視線を移す。

 高台の大輝の家からは、海の方までよく見渡せる。その一角、西側の方に煙があがる一角が見えた。
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