パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 晴れてお付き合いを始めた私たち。
 今では父も母も、大輝のことを『家族』として接してくれているし、颯麻も大輝のことは大好きだ。
 ――もちろん、私も。

 ◇

「梓桜ー、ちょっと颯麻止めて!」

 いつの間にか引っ越し業者が到着していたらしい。
 大輝が、業者が玄関まで運んでくれた荷物を抱えてリビングに入ってくる。

「お義父さん、この辺でいいですかね?」

「ああ、いいよ」

 大輝が運んでいたのは父の机と椅子。佐岡家でリビングに置いていた、父の小さな書斎だ。

 父は設置してくれた大輝にお礼を言って、さっそくそこに座る。

「すみませーん、ベッド運びますねー」

 業者のお兄さんの声がして、颯麻を抱っこしキッチン側に身を引く。
 それで、気が付いた。

 新しい家は、キッチンから寝室――父の過ごす部屋が、良く見える。

「お母さん、この家って――」

「ふふ、お母さんが言ってやったのよ。どこからでもお父さんが監視できるような設計にしてちょうだいって」

 備えつけの食器棚に食器を仕舞いながら、母がそう言って笑った。この家には、母と父の想いが詰まっている。
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