パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 その日のうちに、注文していた家具や家電も届いた。
 ある程度片づけを終えたところで、私は母に「もう大丈夫よ、もともと荷物も少ないし」と言われてしまった。

「本当にいいの? 泊まろうかと思って、私と颯麻の着替えとか持ってきたけれど――」

「いいの。ほら、それに――」

 母が、父と大輝の方をちらりと見た。二人は何かを話して、笑い合っている。その足元で、颯麻がミニカーを転がして遊んでいた。

「――あのお家に、私たちがいたんじゃ恋人らしいこともできなかったでしょうから」

「ちょ、お母さん!」

 慌てて出した声は思いの外大きくて、真新しい塩沢家に響く。けれど、言いながら私は思い出していた。

 大輝の希望もあって、私と颯麻はそのまま佐岡家に住むことになったことを。
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