パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 それからポンプ車に乗り、息子の「もっかいー!」攻撃を受けながら、もう一度並び直しを繰り返すこと5回目。
 さすがに息子も覚えたらしく、抱っこしていなくとも私の隣でじっと並んで待てるようになった。

「お、颯麻(そうま)くんおかえり!」

 すっかり消防士さんたちに名前を覚えられ、息子も慣れてきたのか「きたよー!」と笑顔で返すようになった。

「何度もすみません……」

 へこへこする私に、消防士さんはニカっと笑う。
 大輝も何度も話しかけに来てくれて、ちょっとだけ役得だと思ってしまった。

「何度もごめんね、息子が……」

 またこちらの様子を見に来た大輝に、思わずため息交じりに言う。

「いいって。未来の消防士候補だろ? 歓迎歓迎!」

 大輝は太陽みたいに爽やかに笑う。
 あの頃と変わらないなと、胸の奥が疼く。
 彼に恋していた、高校時代の淡い思いが胸に広がっていく。

 今だけ、ちょっとだけ幸せに浸らせてください。

 そんな思いで、オレンジ色の服に身を包んでいる大輝をつい見つめてしまった。
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