パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 玄関の鍵を開けている間も、大輝は手を離さなかった。だから、大輝が玄関に入ると自然に大輝に引き寄せられる。

「わ……っ!」

 突然、大輝に抱きしめられた。

「はー、幸せ」

 余裕そうな声だけれど、分厚い胸板にぴったりと重ねた耳から聞こえるのは、私と同じくらいの速さで刻む鼓動。

「なんだ、大輝もドキドキしてるじゃん」

 大輝を見上げる。

「当たり前だろ、ずーっと好きだった女と二人きり。ドキドキしない方がおかしい」

 ニカっと笑った大輝が、こちらに顔を近づけた。だから、私は目を閉じる。

 優しく、唇と唇が触れ合った。

 唇から感じる大輝の体温が、私の身体を熱くする。ジンジンと、頭の先まで火照ってしまう。

 久しぶり過ぎて戸惑っていた感情が、ゆっくりと顔を出す。これは、大好きな人に愛される、幸せな感情だ。

 大輝の気配がゆっくりと離れていく。そっと目を開けると、大輝の顔はまだ近くにあった。

「なあ、もっとしていい?」

 懇願され、断る理由なんてない。私は玄関先で、自ら望むように大輝の首に手を伸ばし、絡め、彼の唇を塞いだ。
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