パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 せっかく着替えたから外にご飯を食べに行こうということになり、大輝と二人でこじんまりとした大衆居酒屋に向かった。

「もっと大人なレストランを知っていれば良かったんだけど」

 と、カウンター席に座った大輝はこぼす。

「お、大輝だ!」

「おっちゃん、久しぶり!」

 カウンターの向こうで「よう!」と笑う彼は、お店の店主さん。大輝に紹介され、ペコリと頭を下げた。

 お店の店主さんと大輝は知り合いというか、大輝はこのお店の常連さんだったらしい。

「最近来ないと思ってたら、可愛い彼女ができたのか~」

 店主さんに茶化されながら、けれど、私の知らない大輝の世界に、私を紹介してくれるのはとても嬉しかった。

 家庭的なおつまみはどれも美味しく、久しぶりのお酒が身に染みる。
 しばらく飲んで、それから大輝と夏の夜の道をのんびりと歩いて帰った。

 互いの手を握っても堂々としていられるのは、きっとお酒の力だろう。

 消防署の横を通り、高校の脇の坂道を上る。懐かしい気持ちも、あの日の悲しい別れも、全部今に繋がっていると思えるから不思議だ。

 近道だからと近所の公園を抜け、大輝の家につく。

 この辺りにも、高校生の頃の思い出に加えて、今までの思い出が増えた。もちろん、これからも思い出がたくさん増えていくのだと思う。
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