パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 玄関を上がり、先に部屋に上がった大輝。
 その後ろ姿を見ていたら、ついふふっと笑いが漏れた。

「どーした?」

「ううん、ただ何となく、幸せだなーと思いまして」

 夏の生ぬるい夜風では、私の酔いは冷めなかったらしい。けれどそれは、大輝も同じだったようで。

「俺も幸せー」

 そう言いながら、ニカっと笑った大輝は先に玄関を上がった私にキスをする。

「あー、もうダメ。待てねーや」

 そう言うなり、私を横抱きにして階段を駆け上がった。

 ◇

 明かりのついていない大輝の部屋、ベッドにそっとおろされる。私に覆いかぶさった大輝は、月明りに照らされてどこか艶やかだ。

「なあ、いい?」

 断る理由もない。私も、大輝を求めていた。
 こくりと頷くと、顔を上げるより先に大輝の唇が降ってきた。

 大輝はそのまま、私の顔中にゆっくりとたくさんのキスを落としてゆく。身体が熱く疼いて、大輝の背中に手を回した。

「大輝、大好き」

 言えば、大輝はまた唇に深い深い愛を落としてくれる。

「俺も。――梓桜、愛してる」

 私たちは、そのまま夜の(とばり)に隠れて、互いの熱に夢中で溺れる。
 初めての、甘美な、優しく溶け合う夜。

 ――私たちの新生活は、まだ始まったばかりだ。
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